漫才・親切

ブータ(仮)


 トボザン(トボ)とツムタ(ツム)のコンビでお送りします。


トボ「はい、どーも~」


ツム「また呼んでいただけて光栄です」


トボ「なんですー? なんですー? この空気ーーーーー♪」


ツム「なんもねえよ、始まってすらない」


トボ「光栄なんてそんな、ツムタさん言うタイプじゃないですよね」


ツム「言うよ、人を何だと思ってんだよ」


トボ「いーや、言わないね」


ツム「てか、さっき言っただろ」


トボ「空耳でした」


ツム「言った! 空耳でも幻聴でもないから」


トボ「そういう人じゃないの信じてますから」


ツム「なんでマイナスなとこの俺信じんのよ、何年の付き合いだよ、もっと俺を理解しろよ」


トボ「三日ですね」


ツム「やめろよ! もっとなげえよ」


トボ「分かりました」


ツム「なんだよ」


トボ「でしたら、ツムタさん困っている人いたらどうします?」


ツム「そんなのどうしたかって聞くに決まってんだろ」


トボ「あ、あそこに困っている人がいますよ」


ツム「急だな、ほんと、どうしました? 大丈夫ですか? こういうことだろ」


トボ「あー、やっぱりだめですね」


ツム「なにが」


トボ「今の方は悪いことしようとしてるのに、周りに人がいすぎて困ってたので声かけちゃいけません」


ツム「声かけちゃいけませんじゃねえよ! 困ってるが違うだろ」


トボ「わがままだなあ」


ツム「わがままとかじゃないから、こういう時は道が分からなくて困ってるとか荷物が重たくて立ち往生とかそういう人を示して確かめるもんだろ」


トボ「さっきの人も困って立ち往生してました」


ツム「悪いことしようとして躊躇してて困ってたのとは違うの!」


トボ「その人は生きる為に仕方なく」


ツム「いきなりそういう真面目なのでくんなよ、今はそれおいといて、マジで」


トボ「あ、あそこにうずくまっている人がいますよ」


ツム「人の話聞かないで進めるなよ。 大丈夫ですか? 今救急車呼びますから返事できます? でどうよ」


トボ「あちゃー、今の人は死体ごっこで遊んでるので困ってませんでした」


ツム「困らせろよ! 死体ごっこ遊びは寝転んでるものだろ、うずくまってるのとかやめさせろ」


トボ「ほら出た」


ツム「え?」


トボ「困らせろってひどいこという人ですよね、やっぱり」


ツム「やっぱりじゃねえよ! 今は困っている人と出会ったらどうするかって話だろ、困ってない人出してくるな」


トボ「出会い系?」


ツム「そういう出会いじゃない!」


トボ「ツムタさん、全く親切にできないね」


ツム「お前だよ、お前が変なパターンばっかやらせるからだろ」


トボ「僕だったらおばあちゃん重い荷物持つよ、よいしょっと」


ツム「そうそう、そういうんだよ」


トボ「そしたら今日も良いことしたなてなって、これで僕は満足して帰ると」


ツム「帰るなよ! なに勝手にお前の話にしてんの? 俺が人に親切にするかどうかの話だよね」


トボ「いやあ、ツムタさんさっきから困ってる人に全く対応できてませんから」


ツム「俺が対応する相手がおかしいからな」


トボ「なんなら僕なんか見ただけで困ってるかどうか分かりますから、今だって」


ツム「は? たとえば?」


トボ「ここにいますよ、ツムタさん、今お困りですよね」


ツム「お前のせいだよ、お前に困ってるんだから当たり前だろ!」


トボ「僕くらいになったら見ただけで分かっちゃいますから」


ツム「むしろこの距離で分からないとかやめろよ」


トボ「こうやって人に優しく親切でいられる心の余裕があるのは良いことですから」


ツム「なにこれ? なんで俺、お前に諭されてんの?」


トボ「ツムタさん、さっきからグラグラしてるじゃないですか」


ツム「イライラな、地震でもないし、立ってられないほどに足腰貧弱で揺れてるとかないから」


トボ「すぐそうやって話グラグラさせるー」


ツム「それ言うならはぐらかす、な、話逸らしてるのお前だけど」


トボ「わかりました、ツムタさん困ってる人やりましょう」


ツム「は? なんで?」


トボ「そうすれば、困ってるときに親切にされるありがたみがわかるでしょう」


ツム「その親切を俺がやるって言ってるだろ! もういいよ」