漫才・名字

右から佐藤、鈴木、入海


 初のトリオ漫才!

 燃えた、燃えたぜ、燃え尽きたぜ

 中心のマイク前に鈴木、向って左に佐藤、向って右に入海の立ち位置でお送りします


佐藤「どうも、はじめましてー」


鈴木「右から佐藤、鈴木、入海(いるみ)です」


入海「よろしくお願いしまーーーす」



佐藤「来ましたよ、いよいよ我らの出番ですね」


鈴木「はい、みなさんはじめまして、鈴木です」


入海「くっくっくっ、鈴木は佐藤の中でも最弱」


鈴木「鈴木は佐藤枠と違うからね、急になに言い出しちゃってるのかな、お前は」


佐藤「くっ! 鈴木は鈴木の中でも最強」


鈴木「それはそうだよね、すずき以外ないよ、急になにこの二人」


入海「いいだろう、お前にすずきの名をやろう」


鈴木「元から鈴木だわ! なに言ってんだ」


佐藤「僕たち、トリオで漫才は珍しいですから名前は間違えずに覚えて帰ってほしいですね」


鈴木「佐藤と俺はまあ、ありふれているからいいよね」


入海「俺なんか、いまだにかーちゃんにも覚えてもらってないよ」


鈴木「お前のも名字だろ、どこの世界に自分の名字覚えてない母親がいるんだよ」


入海「あなたはひろしよね? なんて言われてさ」


佐藤「【鈴木をドツきながら】それ名前だろ!」


鈴木「俺にツッコんでどうすんだよ」


佐藤「俺の左にいるのは変わんないから、お前にツッコんでも変わんないかなって」


鈴木「変わるよ! ツッコミは本人にやらなきゃ意味ないだろ」


入海「【鈴木の肩をはたきながら】このどじっ子めー」


佐藤「【鈴木をドツきながら】お前には負けるよー」


入海「【鈴木の肩をはたきながら】なにこのー」


佐藤「【鈴木をドツきながら】やめろよー」


鈴木「止めろ!! 俺越しに、俺関係ないやり取りで巻き込むな!」


二人「・・・」


佐藤「【身振り手振りのジェスチャー】・・・」


鈴木「なんか喋れよ」


佐藤「あー、死ぬかと思った」


鈴木「息まで止めてたのかよ、息止める必要なかっただろ」


入海「【身体をプルプルときざませる】・・・」


鈴木「お前まで息止めてるのかよ、呼吸はしろよ」


入海「あー、生き返るかと思った」


鈴木「息止めてて生き返るわけないだろ! むしろ生きてるの今だから」


佐藤「まったく、田中が止まれなんて言うから」


鈴木「鈴木だよ! 田中って誰だよ」


入海「【鈴木を見ながら】人の名前間違えるなんて本当に失礼なやつだ、なあ佐藤」


鈴木「どっち!? 俺見ながら佐藤って言ったよね、今。俺は鈴木」


佐藤「【さも驚いたようなゼスチャー】お前、田中じゃなかったのか」


鈴木「今そこ? 遅いよ」


入海「【驚いたように】なんだって」


鈴木「お前は田中だとすら言ってないからな」


入海「いいよな、お前たちは多数派の名字で」


鈴木「多数派って、まあ、国内では持ってる人が多い名字だね」


佐藤「わかるぞ、佐藤が田中と言ったらイヌも田中になるって名字民主制だな」


鈴木「わかんないから、なにそれ」


入海「いつも家だと、お前の名字は少数派だからってチャンネル変えられない」


鈴木「それ名字関係ないから! 家族なら名字一緒だろ、名字の多数派は関係ないから」


佐藤「入海の家は複雑なんだな」


鈴木「なんにも複雑じゃないから! 単に家での発言力がないだけ」


入海「そうだったのか」


鈴木「何、今気づいたみたいになってんだよ、気づけよ」


佐藤「名字で言うとさ、うちは親が名字違うんだよ」


鈴木「いきなり重いな、夫婦別姓ってやつ?」


佐藤「いや、家族別姓」


鈴木「なにそれ、聞いたことない、初めて聞いた」


入海「あーあれか、父ちゃんがさで、母ちゃんがとうで、お前が佐藤か」


鈴木「何その名字も合わさって生まれましたって」


佐藤「そうなんだよ、それが他と違うなって最近気づいてさ」


鈴木「当たってんのかよ! もっと早くに気づけよ、その特殊なのに」


入海「けどさ、普通外出てまで家族の名字名乗ってたりしないでしょ」


鈴木「お前はさっきからなんでそんなに佐藤の事情に詳しいの?」


佐藤「子供は男と女から合わさって生まれるものだし」


鈴木「そうだけど、名字は子供じゃないから生まれた時に合わさるものでもないからな」


入海「うちなんか親と合わせても俺の名字にならないよ」


鈴木「お前んちはもっと特殊!」


佐藤「これからは名字も個性だよな」


鈴木「もうさ、普通に名乗るでいいじゃん」


入海「わかったよ、馬面」


鈴木「鈴木だ!! なにしれっと人の面体を名字のノリで言ってんだよ」


佐藤「そうだったのか、猿顔」


鈴木「鈴木!! 一応言うけど、馬面でも猿顔でもないからな、むしろお前らがその手の顔だろ」


入海「【鈴木の肩をはたきながら】佐藤は本当に上手いこと言うなー」


佐藤「【鈴木をドツきながら】やめろよ、お前には負けるよー」


入海「【鈴木の肩をはたきながら】ちょっ、いたいってー」


佐藤「【鈴木をドツきながら】やめろよー」


鈴木「やめろーーー!!」


二人「・・・」


鈴木「もう息止めるのいいから」


佐藤「残念だったな」


入海「今のは」


二人「時を止めたのさ」


鈴木「わかるか! なに二人でどや顔してハモッてんの」




三人「【お辞儀して】どうもありがとうございました」